吾輩はやかんである

何を血迷ったか、 アイマス1時間SSに挑戦してみた。
使用お題は「湯気」。駄文にお付き合いくださる方のみ続きをどうぞw。


吾輩はやかんである。名前はまだない。

どうやらここの主らしい真っ黒な男が、 「ティンと来た!」と言って商店街の福引の抽選機を回した結果、 吾輩はここに連れてこられた。
ちなみに吾輩は福引においては4等賞であったらしい。 彼の「ティン」とかいう直感は福引の4等賞に相当するものなのであろう。

毎日、朝になると事務員の女性が吾輩でお湯を沸かして、お茶とコーヒーを入れる。 吾輩を洗ってくれるのもこの事務員だ。
吾輩の主は書類上は、吾輩をここに連れてきた真っ黒な男らしいのだが、 事実上の吾輩の主は、この事務員だと思っている。

その後しばらくすると、時折、長身の女性が3回程、私の前を通り過ぎる。 3回もここに来ておいて、
「あらあら、ここはどこかしら~。」
というのは、やかんながらどうかと思う。

昼になると二人の少女がときおりここに来て、おにぎりを握っていく。 一人は食費の節約のため、もう一人は究極のおにぎりを目指すため……なんだそうだ。
しかし、ガスコンロを使うのが吾輩だけというこの給湯室に 炊飯器が用意されているというのは、ここに来て以来の謎である。

3時頃になると3人程集まって、「お茶会」なるものが行われる。
どうやら、一人がお菓子を持参し、一人がお茶の葉を持ち寄り、 もう一人がお茶を淹れるというのが暗黙のルールのようである。
お茶の葉もそれを淹れる娘の腕もなかなかのもので、 こういう時はやかん冥利につきるというものである。

かと思えば、我輩に水を入れてそのまま飲む娘がいるかと思えば、 あろうことか牛乳を吾輩にいれて飲む娘もいるのは嘆かわしい。
極めつけは我輩を頭に載せて走りまわるとか、振り回して武器にされたりする子供までいる事だろう。
こういう時は、メガネの娘のカミナリが子供に落ちるまでじっと耐え忍ぶしかないのである。

夜は時折、事務員がコーヒーを淹れにくる程度だが、 毎月、「給料日前」とかいうこの時期になると、 男がカップラーメンを作りに来るのが恒例行事である。

そんなわけで、吾輩はこの765プロというらしい会社の給湯室の一口だけのガスコンロで、 今日も湯を沸かし、湯気を吐き、笛を吹くのである。

-おわり-

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